‐ gaze という言葉 ‐

 ドイツ語の荒く織った布を意味するタイトルのシリーズです。その語源は中近東の絹織物だそうです。それを聞いたとき、この言葉とガラスが結びつきました。

ガラスと同じ場所で生まれたその絹布の歴史と、織物の工程の膨大な時間、その積み重ねられた時間にあこがれを持ち、瞬間的な吹きガラスの工程に魅了され、相反する二つの「時」の流れをこの言葉に込めています。

 

‐ 技法について ‐

ベネチアングラスの伝統的な技法のレースグラス・レティチェッロをもとに、より繊細な表情を作りだします。本来、線による模様の美しさを目的とした技法ですが、線が見えないほどの密度で作ることによって、技術を超えた表現になることを目指しています。もともとこの技法が生れた背景は、(ガラスではない本来の)レースの器があると素敵じゃないかというところから当時の職人・マエストロが生み出したものではないでしょうか。そんな想像をしながら作っています。

 

 

 

‐ 吹きガラスで作るのは ‐

ふくらませるだけで容量ができる吹きガラスの手法は器を作るのに適した方法です。繰り返し繰り返し作ることで、昔の職人、マエストロが何を考えて作っていたのか、なのも考えていなかったのか、たまにこれはいい!と思うものが出来ることがあったのか、そんなことを考えながら先人たちの追体験をしているのかもしれません。

 

‐ そろえないこと‐

ひとつひとつ手を動かしてつくり、瞬間瞬間の形を取り出すことに集中するあまり、いちいち定規を当てながら作業をしていてはガラスを操作するタイミングを逸してしまいます。それはガラスの伸びていく勢い、ふくらみ張りつめていく緊張感を削いでしまいます。おそらく機械のように正確に作業を進められるのならピタリと揃った形になるでしょうが、それではいまいち面白くない。ガラスの状態、僕のコンディション、気分、そんなものがひとつになった瞬間の、そのタイミングでしか生まれないモノに魅力を感じ、変化を受け入れ、楽しみ、作っています。

それに、手にする人の手の形もみんな違いますし。

 

‐ そろえること ‐

そろえることが必要なモノもあります。そろえて作ることも嫌いではありません。一日吹き仕事をしてピタッとサイズ・形が揃っているとき清々しささえ感じます。

揃える基準も、モノによって違います。形・サイズともにきっちりそろっているモノ。高さだけそろっているモノ。容量だけそろっているモノ。雰囲気だけそろっているモノ。様々です。

 

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